摂食障害によって生き続ける苦しみに引きずられながら、それでもこの人生の"落とし穴"の出口を懸命に探し続けることをあきらめなかった麻紀さん。

ヨガとの運命の出会いが摂食障害から解放する大きな助けとなりました。

第2部では、ヨガとともに摂食障害から完全離脱した道のりを辿っていきます。

理想への『完璧主義』と『現実逃避』

今、あの頃の自分を振り返ると、高校生の頃の自分と何も変わらず、自分で作った理想の自分を必死に演じながら仕事をしていたのだと思います。

そして、ある日それが限界に達すると現実逃避をする…その繰り返しだったのです。無理に引っ張り続けた糸がプツンと切れるのと同じです。切れた糸をまた繋ぐための一定の時間が私には必要だったのです。

しかし、一度切れた糸は繋いでも元の強さには戻りません。私の心の糸は長年引っ張り続けたことでどんどん弱くなっていきました。

何度か心の糸が切れた後、父が他界したタイミングで実家へ戻ることになりました。

この時の私の心境は「私は都会に負けた」というものでした。私は都会で何もできずに田舎へ帰るんだ…やっぱり私は何をやっても成功しないし、幸せにもなれない…そんな気持ちでした。

「人生は戦いだ」と常に考えていました。何と戦うのか?眼の前の世界と、です。

今考えると笑ってしまうほど自分自身を理解していなかったなと思えます。戦っている相手が自分自身だと気づくまでにはもうしばらく時間が必要でした。

母との二人三脚から心の解放へ

実家で母親と暮らしながら家業を手伝う日々は私の心に平穏さを与えてくれました。

もちろん過食嘔吐は治らず、母親の目を盗んで続けていました。目を盗んで…と私は思っていましたが、母親は私が戻ってきた時から、いや、ずっと前から分かっていました。

でも彼女は私を叱ることも諭すこともありませんでした。「バレた…」と思った時に言ってくれた言葉が私を救ってくれました。  

「別に誰かに迷惑をかけているわけじゃないし、好きにしたらいいよ。」

これが心の落とし穴から抜け出す最初のきっかけでした。母親に許してもらった安堵感から、その後の私は生きることに対して少しずつ前向きになっていきます。興味のある習い事を始めたり、新しい資格の取得もしました。

その中の1つが『ヨガ』だったのです。

『ヴィンヤサフロー』との運命の出会い

ヨガとの出会いは旅で訪れたニューヨークでした。今でも変わりませんが、アメリカで最もメジャーなヨガのスタイルは『ヴィンヤサフロー』で、呼吸と連動して流れるようにアーサナを行っていくものです。

私が初めて体験したのもまさにこのスタイルで、元々体を動かすのが好きだった私にピタッとはまりました。レッスン中からとにかく楽しくて、終わった後に味わった開放感は今でも忘れられません。

日本へ帰国した後もヨガの魅力が忘れられず、すぐに自宅近くにあったヨガスタジオに通い始めました。それから週に1〜2回、ヨガをする生活が始まります。