過食嘔吐でもがき続ける大学時代

その間、一人暮らしを始め、楽しい大学生活を送り、アメリカへも留学しました。

過食嘔吐をすることで心身のバランスを保ちながら…。でも、そこで周りに見せていた私は本当の私ではありませんでした。自分で作った理想の自分を演じることに必死でした。常に心の落とし穴の中から自分の上にある明るい世界を見ていたように思います。

そのような状態は社会人になってからも続きましたが、社会へ出たことで状況はさらに悪化していきました。私が働きだしたのは、バブル景気が終わり世の中が一気に不景気へ突入した時代…。

就職難で自分の希望した職業には就けない、正社員になれないのが当たり前で、私自身も理想とはかけ離れた仕事をせざるを得ませんでした。

初めてのOL生活、慣れない仕事、会社での人間関係…それがストレスとなり、肉体的にも精神的にも疲弊していきました。休日になると一歩も外へ出ることができず、ずっと家の中で過食嘔吐を繰り返す日々…。

離職後に襲ってきた『引きこもり』

最初の会社で働きだして2年ほど経った頃、「肉体的に限界だ」と感じて仕事を辞めました。

「しばらくゆっくり休もう」と思ったのですが、それは私にとっては逆効果でした。仕事を辞めたことで外へ出る必要がなくなり、家に籠るようになってしまったのです。今で言うところの『引きこもり』です。

高校生の頃に心の落とし穴に落ちてそのままだった私は、引きこもることで完全に世の中と隔絶されました。いや、自ら世の中と離れたのです。

自分の中だけでなく、現実に落とし穴に落ちたと言っても良いかもしれません。一人暮らしだったので誰にも咎められることなく、その状態は4ヶ月ほど続きました。

自問自答で一歩前に進もうとしたけれど

最初の1ヶ月は自分が思った通りの生活…好きな時に何度でも過食嘔吐ができる…に喜びを感じていました。

しかし時が経つにつれて、この何の変化も無く世の中から忘れ去られたかのような生活に不安を感じ始めたのです。
「このまま誰にも気づかれずに生きていくのかな…。」
「私、どうしてこんなことになっちゃったんだろうな…。」
「なんで自分ばっかりこんな辛い人生を送らないといけないんだろう…。」
そんな言葉が頭の中でずっとグルグル回っていました。

自己批判と虚しさの先にあった、現実問題

3ヶ月を過ぎた頃、ようやく自分の中にまだ微かに残っていた生きるエネルギーが少しずつ増えていき現実世界へと私を引き戻してくれました。

「こんな自分ではダメだ!なんとかしなくちゃ」…世の中と隔絶された人生を生きていくことに虚しさと不安を感じ、再び世の中へ出る決意をしたのです。

現実的なことを言えば、貯金が少なくなって生活できなくなる怖さもありました。両親には自分の現状を話していなかったので、金銭的援助は一切ありません。

生きていくためには外の世界へ戻らざるを得ない…それが私にとって良い意味で焦りとなり、次の仕事に就くことになったのです。

悪循環のスパイラルに囚われる日々

初めて新しい会社へ出勤する最初の一歩は本当に恐ろしく辛いものでした。出会う人すべてが自分をどう見ているのかが気になるのと同時に、『あの人は取るに足らない人間だ』と思われているに違いないと勝手に思い込んで自己嫌悪に陥りました。

そのような他人への恐怖心を抱きながら仕事を続けていましたが、世の中から逃避することで楽になることを覚えてしまった私は、また同じことを繰り返します。

次の仕事も長く続かず2年ほどで辞め、以前と同じように『引きこもり』を始めたのです。そしてまた3ヶ月ほどすると、自分を奮い立たせて世の中へ戻りました。

一歩進んで二歩下がる。悪循環の中で麻紀さんはどのように人生の"落とし穴"の出口を見つけたのでしょうか。2部では、麻紀さんが摂食障害からの『解放』に、ヨガが大きく助けとなってくれた様子が描かれています。

北嶋 麻紀(Maki Kitajima)

Anandah Yoga School代表。ヨガを体系的に学べるよう、アーサナのみならず暝想や経典学習講座なども行う。また指導者養成講座にて後進の育成にも力を入れている。
【座右の銘/好きな言葉】Be in Yoga Always(いつもヨガと共に)
【指導しているヨガ】ヴィンヤサフロー
インスタグラム: https://www.instagram.com/anandah.maki/
ウェブサイト: https://www.anandahyogaschool.info/